2014/05/30外務委員会(集団的自衛権)

○鈴木委員長 次に、畠中光成君。
○畠中委員 結いの党の畠中光成です。本日は、外務委員会での質問の機会をいただき、ありがとうございます。
 中国の海洋進出や朝鮮半島情勢など、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増していることは言うまでもなく、この東アジアにおける我が国の対応が世界全体のリスクとならないように、慎重に取り組んでいかなくてはなりません。
 国民の生命、我が国の領土の守りを万全にするために、法制上の落ち度がないかを検討すること、これは極めて重要なことでございます。事集団的自衛権の行使容認については各党各会派いろいろなお考えがあるかと思いますけれども、先日、安保法制懇の報告と総理の会見がありましたけれども、その説明あるいは説得力、これはやや不十分だったのではないかというのが私の感想であります。私のような、慎重ではあっても行使容認を排除しているわけではない、しっかり議論して、真っ当な考え方の上に立って、最小限でも必要性を見出していこうという立ち位置の者にとっては、応援したくてもなかなかしづらい、そういうような説明だったのではないかというふうな感想です。
 説明責任は政府側にあるわけですから、ぜひその点を御理解いただいて、会期も残り限られてきておりますので、国会においては、ぜひ引き続き徹底した審議をお願いしたいと思っています。
 さて、きょうは、集団的自衛権を中心に大臣に質問をさせていただきたいわけでありますが、この集団的自衛権というのは、安全保障上の要請側からの議論と、一方で、憲法の制約側からの議論、これを両方から考えていかなくてはならないというふうに思いますが、まずは憲法側の観点から質問をさせていただきたいと思います。
 集団的自衛権の行使容認において、二つの表現の仕方というのがあると思います。一つは、それは解釈改憲だという言い方と、もう一つは、解釈の変更によってそれを行うんだ、こういう二つの言い方が、国会議員の間でも、あるいは新聞報道でも、言葉の使われ方が二通りあるように思います。
 これは法律用語ではないと思いますけれども、このそれぞれの二つの違いについて大臣はどのようにお考えか、お聞かせください。
○岸田国務大臣 解釈改憲と解釈の変更、この二つの違いですが、解釈改憲という用語について法令上定まった定義があるとは承知しておりませんが、憲法の合理的な解釈の限界を超えて、本来なら憲法の条文自体を改正しなければ実現できないような結論を導き出すことをいうと考えられます。
 他方、憲法の解釈の変更につきましては、政府は、昭和四十年に文民に関する政府の見解を変更した例があるとおり、これまでも憲法の解釈の変更を行う可能性について否定はしていないところでありますが、いずれにしましても、再三申し上げておりますように、政府の憲法解釈には論理的整合性あるいは法的安定性の確保が必要であると認識をしています。
○畠中委員 私は、解釈改憲というのは、今大臣がおっしゃられたとおりの認識で、同じ認識を持っておりまして、いわば憲法に規範というのがあって、この規範を超える内容を解釈によって変えるというのが解釈改憲であって、一方の解釈の変更というのは、あくまで憲法規範の枠内のものであるという違いがあると思っています。
 確認の意味でお聞かせいただきたいんですが、安保法制懇の報告や総理の会見等、今行われている集団的自衛権をめぐる議論というのは、憲法規範を超える解釈改憲ではなくて、あくまで憲法規範の枠内での解釈の変更だ、こういう理解でよろしいでしょうか。
○岸田国務大臣 政府として再三説明をさせていただいておりますが、憲法の解釈につきまして、論理的整合性、法的安定性、これが重要だということを申し上げてきております。これはあくまでも解釈の変更であると認識をしています。
○畠中委員 よくわかりました。
 よく、集団的自衛権の行使を認めるのならば憲法改正が筋だ、こういう議論があるわけでありますけれども、私は、それはやや粗い議論かなというふうに思っておりまして、あるいは別の議論なのかなというふうに思っております。
 といいますのも、憲法九条は戦争を認めていない、しかし、自衛権、言うならば国際法上の自衛権と言いましょう、これは、もともと国家が持っている主権の一部なわけでありまして、本来は憲法九条とは無関係なのだと思いますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。
○岸田国務大臣 国連憲章上、どの国も、主権国家として、個別的自衛権そして集団的自衛権を持っているという規定になっていると承知をしております。
○畠中委員 憲法の話をしますと、憲法の一番の根幹というのは言うまでもなく基本的人権の保障にある、これを守るために自衛権というのが存在する、私はそう思っております。ただし、我が国の憲法において、必要最小限度の範囲ということで、自衛隊の存在とともに個別的自衛権が認められている。しかし、集団的自衛権というのは、御承知のように、持っているけれども行使できない、これが今の解釈であるわけであります。
 この持っている集団的自衛権というのは、国際法上全ての国家にあるものですから、集団的自衛権を量であらわすのが適当かどうかはともかく、いずれにせよ、その全部を我が国は持っている、こういうことだと思います。しかし、現在の解釈では、集団的自衛権は全部フルで持っているけれども、行使についてはできない、すなわちゼロである、こういうことだと思うんです。
 では、お聞きしたいんですが、現在検討されている解釈変更によって国際法上の集団的自衛権全部を行使できるのか、あるいは、先ほどお聞きしましたが、憲法規範の枠を超えてしまうからあくまでそれは限定的なものとなるのか、大臣、お答えください。
○岸田国務大臣 今議論されている中身ですが、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときという限定的な場合に集団的自衛権を行使することにつきまして、我が国が従来認めてきた必要最低限の範囲内に含まれるかどうか、こういったことについて議論が行われていると承知をしております。
 我が国が議論しておりますのは、今申し上げたように、あくまでも限定的な集団的自衛権が、我が国の従来の憲法に対する考え方、必要最低限の範囲内に含まれるかどうか、こういった議論について研究、議論が続けられていると承知をしております。
○畠中委員 今大臣がおっしゃられたのは、私は同じ認識であります。
 この集団的自衛権の議論というのは、私は二段階あるというふうに思っています。すなわち、憲法規範によるそもそもの歯どめ、どこまでが憲法上可能なのかという議論が一つ。
 そもそも歯どめの議論を初めからやるのはおかしいというふうにおっしゃられる方もいますけれども、まずこの国会で行うべき最大の議論というのは、憲法上どこまでが可能なのかということが一番大事なことだろうと思います。すなわち、憲法規範にどの程度、集団的自衛権の行使を容認できるすき間が認められるのかという議論が今一番大事なのだろうというふうに思っています。
 すなわち、第一段階は、憲法による集団的自衛権の歯どめというのは、全部なのか限定的なのか、あるいはゼロなのか、こういう第一段階の話があります。そして、解釈変更によって変えられる部分と憲法改正を経ずしては変えることのできないそもそもの憲法規範、その両者のすき間を議論する、これが第一段階です。第二段階は、これはまさに、法律によってどのような制約を設けるかという歯どめ。この第一段階、第二段階というのがあると思います。
 これは重ねた質問になるかもしれませんが、この第一段階の憲法の規範の枠内におさまる集団的自衛権の行使のすき間というのはどの程度あると思われますか。大きい、小さい、いろいろな表現があると思いますけれども、大臣、お答えください。
○岸田国務大臣 先ほど申し上げたように、今、我が国の安全に重大な影響があるという限定的な場合において集団的自衛権を認めるということが、従来我が国が認めてきた必要最低限の範囲内に含まれるかどうか、こういった議論を行っているわけですが、今、現状においては、必要最低限の中に限定的な集団的自衛権の一部でも含まれるかどうか、そのものにつきましても、まだ結論は出ておりません。よって、どの程度含まれるかどうかということも含めて、今の段階では結論は出ていないと承知をしております。
 ぜひ、これから、しっかりとした与党の議論等を踏まえて、政府としての方針を確定したいと考えています。
○畠中委員 すなわち、今の大臣の御答弁から察するに、今議論されているこの集団的自衛権の行使容認というのは、ゼロから限定的、この幅の中の議論だろうというふうに思うわけであります。すなわち、全部というのは憲法規範を超える話であって、これはなかなか難しいだろうということなんだろうと思います。冒頭に申し上げたように、解釈改憲という言葉が使われるケースもありますけれども、ある意味、解釈改憲という言葉の使い方は間違いなのであって、解釈の変更というのが正確な言い方なんだろうというふうに思うわけであります。
 この憲法規範の枠を超えない限定的な集団的自衛権でありますが、一方で、憲法改正をして集団的自衛権を認めるべきだという意見もあるわけであります。私は思うんですけれども、憲法規範を超える集団的自衛権の行使を容認しようとするのであれば、当然、憲法改正が必要だ、しかし、現在の憲法規範の枠内の限定的な集団的自衛権を容認しようとするのであれば、解釈の変更でも可能だと。しかし、その程度という言い方はちょっと語弊があるかもしれませんが、その範囲の集団的自衛権の行使容認を憲法の改正によってやろうとしてしまうと、私はむしろ、大きく日本が変わってしまったんじゃないかというふうに対外的にもとられてしまう、それぐらいの大きな変更という意見も一方ではあって、そのとおりでもあるんですけれども、しかし、憲法規範上はそのような考え方をすべきではないかというふうに思っています。
 そこで、大臣、お聞かせください。憲法改正と集団的自衛権、今、私の意見を申し上げましたけれども、大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
○岸田国務大臣 今回の安保法制懇の報告書の中には、まず、大きく二つの考え方が示されました。一つは、いわゆる芦田修正論に基づいた考え方が示され、もう一つは、先ほど申し上げました、我が国の安全に重大な影響がある場合等、限定的なケースにおいて集団的自衛権を認めるという考え方は従来政府の考えていた必要最低限の範囲内に入るという考え方、この二つの考え方が示されました。前者は従来の政府の憲法解釈との整合性においてとることはできない、後者においては研究を進めていこう、こういったことになったわけです。
 いずれにしましても、論理的整合性あるいは法的安定性といったものをしっかり重視しながら議論を進めていく、こういった姿勢は重要であると認識をしております。
○畠中委員 今大臣と議論させていただきましたように、憲法規範のすき間の部分に、最小限の、限定的な集団的自衛権のすき間があり得るかどうかということを国会でしっかりと議論をしていかなくちゃいけないというふうに思うわけでありますけれども、それが、私は、決して大きくない範囲なんだろう、結構小さいすき間なんじゃないかというふうな考え方を持っております。そうであれば、現状認められている個別的自衛権を、適正化といいますか、個別的自衛権の範囲を広げることによって対応可能かもしれない。ここの両者の考え方というのを比較検討していくという作業も重要だろうと思います、きっと与党間でもされているんだろうと思いますけれども。
 結論はいかなることになったにせよ、こういった下から積み上げていくステップというのは極めて重要だと思うんです。しかしながら、ここのところの政府・与党のいろいろなお話を聞いていると、特に安倍総理の発言等を聞いていると、まず集団的自衛権の行使ありきで、下からの積み上げというのが余り感じられなかったというふうに思いますので、ぜひ、こういう積み上げのステップアップをしていきながらの議論をお願いしたいと思っています。
 さて、時間も限られておりますので次の質問に移りますけれども、仮に集団的自衛権が認められた場合の発動要件についてお伺いしたいんです。
 個別的自衛権の場合は、御承知のように、我が国に対する急迫不正の侵害があること、これを排除するためにほかの適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこととあります。これは極めて厳格かつ明快な要件でありまして、戦後、我が国は、一度もこの個別的自衛権を発動してこなかったわけであります。
 集団的自衛権の場合は別途発動要件が必要になってくるわけでありますけれども、安保法制懇で出てきた報告書では、「我が国と密接な関係にある外国に対して武力攻撃が行われ、その事態が我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときには、我が国が直接攻撃されていない場合でも、その国の明示の要請又は同意を得て、必要最小限の実力を行使」とあります。
 この中で「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性」というのが気になりまして、これは個別的自衛権の発動要件に比べて極めて曖昧模糊としたものではないでしょうか。我が国と密接な関係にある国の明示の要請あるいは同意、これについては極めて明確なわけなんですけれども、重大な影響を及ぼす可能性というのは非常に曖昧だというふうに思います。
 もちろん、安保法制懇の報告の中には、そのような場合に該当するかについては、「我が国への直接攻撃に結びつく蓋然性が高いか、日米同盟の信頼が著しく傷つきその抑止力が大きく損なわれ得るか、」など、「その他」という言葉を含めて、総合的にではありますが、判断基準が示されています。
 要は、皆さんが一番気にされていることだと思うんですが、密接な関係にある国から要請があれば出ていかざるを得ないとも読み取れるのではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
○岸田国務大臣 まず、御指摘の集団的自衛権行使のための要件につきましては、安保法制懇の最終報告書において要件として挙げられていた項目です。政府としましては、この報告書を受けて、基本的な方向性を示した上で、与党の議論も経た上で、そもそも集団的自衛権を行使するべきなのかどうかも含めてこれから議論を進めていくことになります。ですから、まだ何も決まっていないわけでありますし、ましてや行使するかどうかも決まっていないわけですから、要件につきましても、今の段階では具体的なものが確定したものではないということであります。
 そして、その上で申し上げますが、仮に集団的自衛権について行使するという判断が行われたとしても、それを行使するためには具体的な法律が必要になります。法律を国会で御審議いただいて、国会の御判断をいただいて承認、成立しなければ、集団的自衛権は具体的に行使することはできないわけです。
 そして、集団的自衛権は権利であって義務ではないわけですから、法律ができたとしても、実際に行使するかどうか、これは時の政府の重大な判断が求められるわけでありますし、それとて、国会においてしっかりと御議論いただき、国会のさまざまな批判にも耐えられるしっかりとしたものでなければならない、こういったことであります。
 ですから、仮に集団的自衛権行使を認めるということになって、それにさまざまな条件がつけられたとしても、その条件に当たるかどうか、その判断等は、今申し上げましたさまざまな過程を通じてしっかりと慎重に判断されるものであると認識をしております。
○畠中委員 わかったようなわからないような気持ちでおりますけれども、時の政府の判断ということは、要は、逆に言えば、要請があったら断りづらい、そういうことも十分にあり得るともとれる御答弁だったんじゃないかなというふうにも思うわけであります。
 ですからこそお聞きしたいんですけれども、逆に、密接な関係にある国から要請があっても、我が国の安全に重大な影響を及ぼさない事例、これは要請があったとしても我が国の安全に重大な影響を及ぼさないんだという、集団的自衛権を発動しない事例というのはどういったものが考えられますでしょうか。
○岸田国務大臣 我が国と密接な関係にある国からの要請、これは、先ほど申し上げましたように、安保法制懇の最終報告書の要件には書いてあります。これは、そもそも国際法上の集団的自衛権の要件から引いてきたものではないかと考えておりますが、この要件につきましても、密接な関係にある国は、あらかじめ決めておくものではなく、条約関係等も必要ない、こういった解釈が国際法上行われています。
 この要件については今申し上げたとおりでありますが、そもそも我が国は、集団的自衛権を行使するかどうかそのものも含めて、その要件等につきましてもまだ何も確定していないわけでありますから、この段階で、具体的な要件について、断りづらくなるのではないかとか、そういったことについてどう考えるかとかいうことを今の時点で申し上げるのは困難であると思いますし、適切ではないと考えます。
○畠中委員 なかなかお答えづらいということは理解はするものの、今現在議論が行われている、その過程でも少しはお示しいただければなというふうに思うわけであります。
 具体事例というのが十五個出ましたね。総理の紹介ということで、邦人輸送中の米輸送艦の防護という事例を出されました。
 ちょっとお聞きしたいんですが、この具体事例について、事例の八つ目の邦人輸送中の米輸送艦の防護と、具体事例の九つ目、武力攻撃を受けている米艦の防護、この違いというのは一体何なんでしょうか。
○岸田国務大臣 政府としてお示しをさせていただいた十五の例の八例目と九例目の違いについて御質問いただいたということでありますが、これは、問題意識については、それぞれこの資料の中で触れております。
 邦人輸送中の米輸送艦の防護につきましては、「紛争下で命の危険がある日本人や米国人を輸送する米国の輸送艦を守れなくてよいのか。この船に乗っているかもしれない子供や母親たちを助けられなくてよいのか。」これが問題意識であります。事例九、武力攻撃を受けている米艦の防護、これは、「我が国にも武力攻撃が行われかねない状況下で、我が国の安全を確保するには米艦防護などの米国への協力により米軍の態勢を増強することが不可欠であるのに、それができなくてよいのか。」これがこの二つの問題意識の違いだと考えます。
○畠中委員 問題意識というのは確かに違うわけでありますけれども、あくまでこれは、現状の安保法制上の何に問題があるかということのための事例なわけですよ。問題意識は、それはどなたでも多種多様あるわけでありますけれども、あくまで安保法制上、この事例八と事例九というのは、結局のところ、言っていることというのは同じなんじゃないかなというふうに思います。
 すなわち、事例八で邦人を乗せているということ、だからこれは、在外邦人の救出であったり在外邦人の保護、こういったところを言いたいのかなとも思ったんですが、そうでもない。よくわからないというのが私の感想で、わざわざこの八と九、安保法制上どういう違いがあるのかなという疑問点でありました。
 ちょっと時間になりましたのであれですけれども、こういった具体事例をもっとお話ししたかったわけでありますが、私、ぜひお願いをしたいのが、こういう具体事例というのは、集団的自衛権行使の初動の話なわけでありますよね。ですから、本来、国民の皆さんが知りたいのは、集団的自衛権を行使した後どのようなことがあるか。それは、当然やり返しもあるわけであります。その覚悟というのが我々政治側にあるのか、あるいは国民の皆さんにこういった説明をしっかりできるのかということが極めて重要だと思っておりますので、ぜひ今後の国会審議の充実をお願いしたいと思っております。
 ありがとうございました。

はたなか光成 <元衆議院議員>公式HP

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