2014/04/22憲法審査会(参考人質疑)

○保利会長 次に、畠中光成君。
○畠中委員 結いの党の畠中光成です。
 本日は、四名の参考人の皆様、大変参考になる意見陳述をありがとうございました。
 このたびの憲法改正手続に関する、いわゆる国民投票法案に関しまして、十八歳への年齢引き下げ、公務員の政治的行為、そしてもう一つ、国民投票の対象拡大という三つの宿題がありましたけれども、我が党は、この三つのいずれに対しても回答を提示させていただきました。
 三つ目の憲法改正以外の国民投票については宿題の期限というのがなかったとしても、一つ目の年齢引き下げ、そして公務員の政治的行為については期限があった中で、ようやく方向がまとまりつつあるというのは、我々、国政に携わる者として当然の責務だと考え、共同提出者に名を連ねさせていただいています。
 しかしながら、この年齢引き下げ、公務員の政治的行為、いろいろな議論がこれまでにもあった中で、私もその間主張させていただいたのが、全体のバランスを見たときに、若年層の権利よりも公務員の権利の方が大事なのかという全体のバランスの印象を申し上げさせていただいた経緯があるわけです。
 まず初めに、四名の方にお伺いしたいんですが、この改正案に対して、全体の印象をお聞かせいただけますでしょうか。
○高橋参考人 私どもは選挙権の問題をやっている団体でして、その意味もあろうかと思いますけれども、基本的にこの問題にとって一番重要なのは、選挙権の年齢の拡大というのが一番私たちにとっては重要だというふうに認識をしています。
 NPO法人Rightsが選挙権の問題を掲げてから十四年になります。十四年前に我々しかいなかった問題がようやく社会問題になってきて、この国民投票法が成立した際に、ようやく選挙権も引き下がるんだということを確信していたわけです。
 しかし、皆さん御承知のとおり、私から言わせれば、いわゆる違法状態になりながらも選挙権が拡大されることがなかったことについてはひどく落胆をしました。
 その点から考えれば、今回の改正案というのは、残念ながら、法案の中には期限がなくなりました。それから、この間、選挙権の年齢引き下げをしようという政治的な原動力となった、憲法改正の議論のためには選挙権を引き下げなければならないという前提、いわゆるリンクと言われている部分がありましたけれども、これも切られてしまいました。
 そういった意味では、法改正を行って、メディアには二年後には十八歳になるというような報道をしているところがありますけれども、私たちとしては、法案が実現して、違法状態にしてもならなかったわけですから、それが法案に期限すら明記されていなくて、そして国民投票と独立されてしまったということについては、本当に大丈夫かという危惧を持っています。
 その意味でも、この憲法審査会の中では、改めて、八党合意のものとこのものをどれだけリンクできるかという議論を皆さんにしていただきたいなというふうに思っております。
○斎木参考人 今回の改正案に対する全体の印象をということだったと思うんですけれども、私も、今、高橋さんがおっしゃられたように、前回の国民投票法案でも三年以内に必要な法整備をすると明記されていたにもかかわらず、それが実際実現しなかったということは非常に残念でありますし、実際、今回の改正案でもその期限が明記されていないというところは非常に残念な部分だなというふうには思っております。
 ただ、同時に、八党の確認書で、選挙権年齢については改正法施行後二年以内に十八歳に引き下げることを目指してプロジェクトチームを立ち上げられるということなので、私としては、単に、この改正案に対しては期限がないというところでは少し残念であるんですけれども、と同時に、こういったプロジェクトチームを設置するというふうに確認をしているわけですから、ぜひともそれを実際に行動に移していくというところをしっかりと注視していかなければいけないなというふうに思います。
 と同時に、やはり、我々も、一方的に批判をするだけではなくて、実際にそのプロジェクトチームが動きやすいような世論づくりであるとか、若年層がそういったプロジェクトチームにどうやってかかわらせてもらえるかどうかというところもしっかりサポートさせていただきながら、まさにこの改正案というものが違法状態にならないようなものになっていくということをしっかりとサポートしていきたいなというのが私のこの改正案に対する全体的な印象です。
○百地参考人 まず、憲法改正手続法全般について率直な印象を申し上げますと、いわゆる護憲派と言われる人々の要求に対して、かなり妥協してここまで来てしまったのかなという率直な印象でございます。
 法律論を申し上げます。
 法律論としては、最初にも言いましたように、この国民投票法というのは国の将来を直接決める非常に重要なものですから、したがいまして、公正な上にも公正なルールが必要である、これが大前提であります。そういう視点から見ますと、現在の成立した手続法、そしてまた今の改正案にしましても、やはりまだまだ不備がある。
 基本的には、私は、公職選挙法に準じていくべきだろうと思っておりますし、例えば、先ほど言いましたように、公務員や教育者の地位利用について、この罰則がないということは、実は、実質、野放しになりかねないというふうに私は危惧しております。
 それから、直接はここでは問題になりませんが、私もかねてよりずっとこの問題に関心を持ってきましたから、その後のいろいろな動きを見てきたつもりですけれども、例えば、一時は放送法まで撤廃してしまおう、適用を撤廃しようというような動きもありました。でも、現在の報道を見ておりますと、もちろんすばらしい報道もありますけれども、しかし、一般的に言うと、かなり歪曲した一方的な報道がなされていることが多いと思います。そういうような中で放送法を撤廃するような動きさえもあった。とりあえず放送法、留意するという項目はたしか残ったと思いますけれども、例えば公職選挙法であれば、虚偽報道に対してもそれなりの対応を定めておりますね。でも、こういったことがなければ、虚偽報道でもやった方が勝ちということになりかねない。
 私はその辺を非常に危惧しておりますので、全体としては、もう少し慎重にきめ細かく議論してほしかったなという気持ちは持っております。
○田中参考人 全体の印象を先に言いますと、二〇〇七年の五月に、三年議論されたんですよ、そしていろいろな修正を経て、一つの到達点で強行されたはず。その時点でのその到達点を大幅に後退させ、あるいは後送りする法制になっていると考えざるを得ない。この点は非常に残念です。
 具体的に言いますと、もうさっきから論点に出ていますが、公務員の国民投票運動は最大限の参加を保障しようというのが当時の確認でした。直接投票行為に関与するメンバー以外は、公務員であっても裁判官であってもお互い語り合っていいではないかというところまでこの国は踏み込もうとしたんです。それを戻し、組織的な規制や地位利用の刑罰化等をやろうとされているのであれば、大幅な逆行と言わざるを得ません。
 十八歳はもうこれまでに実現されるはずだったし、これは法の規定でした。残念ながら、七年間まともにやられず、そして後送りされる。
 それから、大きな議論になっていた最低投票率の問題や有料意見広告の規制問題、発議単位の問題、あるいは地位利用の限定の問題等々、この改正でほとんど検討されずに終わらせてしまうことになりはしないか。
 さっきも申し上げましたが、あのときの審議を結果において無にしてしまうことになりはしないかと懸念しております。
 以上です。
○畠中委員 ありがとうございます。
 全体の印象を伺いましたが、年齢引き下げについて、法律以前の問題として、そもそも年齢と身体的な能力というのは実は関係ないというふうに私は思っていまして、若年層は判断能力がないというふうにおっしゃる方も多いわけですけれども、必ずしも、語弊を恐れずに申し上げれば、年齢が高いからといって判断能力が高いというわけでもないわけでありますから、その関連性というのをまずちょっと解く必要があるのではないかなというふうに思うのがまず一点です。
 そして、そもそも、日本国憲法制定時と比べて、今は人口構造が本当に大幅に変わっていて、先ほど斎木参考人も赤字国債の話や我が国の借金の話をされました。また、高橋参考人も一人当たりの借金の話も講義でされているというお話もありましたけれども、そもそも、日本国憲法が保障している基本的人権さえも、十八歳以上二十歳未満の方々の権利というのを、もしかしたら十分に尊重されていないとも言えるのではないかというような政治課題が今山積しつつあるのではないかというふうにも私は思っています。
 そこで、十八歳選挙権年齢賛成のお立場から、高橋参考人、斎木参考人、御両名にお伺いしたいんですが、賛成の立場で、十八歳に例えば選挙権を認めたときに、あえて懸念されていらっしゃることはどんなことかということをお二人にお伺いしたいと思います。
○高橋参考人 まず、一つ事実として言えることは、例えばドイツやオーストリアなど先行で引き下げている国というのはありますけれども、必ずしも、例えば六十代、七十代に比べて、新しく与えた若い世代の投票率が高いかというと、そういうわけではありません。そういう意味では、投票権を与えたときに、やはり低かったじゃないかというような御指摘をされるということは当然あろうかというふうに思います。
 ただ、先ほども申し上げましたように、二十代前半よりも十代の方が高くなる傾向がある、与えた年齢が。高くなるということがございますので、そこに政治教育をしていくことで、そのまま、高いまま高年齢にシフトしていくことで全体が投票率が例えば上がるとか、また、政治教育の問題でいうと、必ずしも若年層だけが政治リテラシーをつければいいかというと、そうではないと思いますけれども、そういった政治的なリテラシー教育というのを受けた国民をふやすきっかけをつくるという意味でも、選挙権を引き下げるということは非常に有益なのではないかなというふうに思っております。
○斎木参考人 私は、あえて懸念するところを発言させていただくとするならば、先ほどから百地参考人がおっしゃられているように、教育の現場でかなり意図的な、思想の非常に偏った教育がなされてしまって、そしてそれを本当にうのみにせざるを得ない状況が生まれてしまう可能性があるんじゃないか。だから、それはすごく懸念はしています。
 まさにそういったことが、実は今もう既に起こっていることでもあるとは思うんですよね、さまざまな例を百地参考人も先ほど述べておりましたけれども。ですから、十八歳選挙権を実現したときにそういったものがあらわになってくる可能性もあるのではないかなというふうに思っていて、実際に、高校三年生、実際に選挙に行く人たちに対する教育がこれでいいのかというふうに、それがまさに問題提起になる懸念も、もちろん問題点は必ず出てくると思うんですね、問題点が全くない政策案というのは考えられないというふうに思うんです。
 だからこそ、今起こっている問題も含めて一つ一つ、問題が起こったときに、懸念点が起こったときに、それをきちっと、では公務員法をこういうふうにしようとか、文部科学省でこういうふうにガイドラインをしっかりして徹底しようとか、罰則規定をつくった方がいいのか悪いのかということを、しっかりとまたそれを議論していくことにもつなげていくことによって、やはり懸念点、問題点はあると思うんですけれども、それをしっかりと修正していくということ、今後も、実現しただけではなくて、実現した後もしっかりと努力を続けていく必要性があるのではないかなというふうに思います。
○畠中委員 ありがとうございます。
 時間もなくなってきましたので、最後に一点。
 我が党は憲法改正以外の国民投票についても道を開く設計図を提示させていただいたわけですけれども、残念ながら、さらに検討するという、まだ宿題として残るわけです。
 例えば道州制や一院制など、国会議員だけではなかなか決め切れない統治機構の問題とか、東日本大震災、福島の原発事故を受けて原発の是非を問う国民投票とか、こういった、憲法改正以外にも国民投票があってもいいんじゃないか、こういう立場であります。
 この国民投票について、時間も限られていますのでちょっと指名させていただいて、斎木参考人と百地参考人から簡単に一言いただきたいと思います。
○斎木参考人 そういったさまざまな形で、国民投票とか、住民投票もありますよね。実際に、今、日本の場合は住民投票を十八歳が行っている例もあるんですね。ですから、そういったものも含めて、やはり十八歳とか十六歳、そういった若い世代の意見をいろいろな形で取り入れていくような仕組みがあるというのはすばらしいことだというふうに思っております。
○百地参考人 この国民投票につきまして、私は二点申し上げたいと思います。
 一点は、そもそもこういった国家的な重大事項について全ての国民の投票にかけるという制度が果たして賢明なのだろうか。つまり、国民がそれぞれのそういった問題についてどれだけの判断能力があるかと考えますと、やはり国民投票そのものについては慎重であるべきだというふうに考えております。
 それから、現在の憲法の解釈として言えば、憲法は間接選挙制を採用しております。したがって、これを否定するような形での拡大はあり得ないと思いますから、法律でもって国民投票の場をどんどん拡大していくことは、むしろ憲法違反の疑いさえあるのではないかなというふうに思っております。
○畠中委員 一点。過去の政府答弁や内閣法制局長官の答弁にもあったように、法的拘束力のない諮問的国民投票であれば間接民主制を害さないという答弁もあります。ヨーロッパ等では、こういったハイブリッドな国政の制度というのが大分主流になりつつあるわけですから、今後も憲法審査会で検討していきたいと思っております。
 ありがとうございました。 

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